2013年07月24日

蝉たちの次元上昇(?)

伊豆長岡ホテルサンバレー富士見、一号源泉櫓

伊豆長岡の古奈に位置する自家源泉の宿、ホテルサンバレー富士見の敷地内には二つの源泉があるのですが、画像の中に見えるのはそのうちの一つホテル正面入り口の脇に聳える早朝の一号源泉櫓です。でも撮ろうとしたのは実は源泉櫓ではなくて、早朝のこの風景にあふれた見えない音とその主たちなんです。伊豆長岡も真夏の盛り・・・蝉たちは朝5時を過ぎた辺りから、あちこちの木々や茂みの中で競って声を挙げはじめます。曇り空の下の一号源泉の櫓のまわりのわずかな緑の中・・・今この画像の中にはおそらく三十匹は優に超える数のクマゼミたちが潜んでいて盛んにシャッ!シャッ!シャッ!シャッ!(僕には前のめりの4ビートに聴こえます)と声を張り上げています。

ひとつひとつの声を聴き分けてみようと耳を澄ましてみるのですが、その内の三つくらいまでの個体はなんとか数えられてもそれ以上の数になるともう完全に歪んだ音声飽和状態になり、蝉たちの声は空間にあふれて迫る束ねられ大きなうねりとなり、膨張しながら人間の聴覚を自分たちの音声で塞いでしまおうとするかのように内耳を圧倒してきます。ところが不思議なことに、そんな大波のような蝉の合唱の中でもはじめに数えることの出来た三つくらいの個体が発する音声はなんとなく方向を辿ることが出来、指向性マイクを左右に振りながらキャッチした音声を周囲から選り分けて徐々に集音エリアを狭めて音の発信位置を特定するような感覚で目を向けた先には、確かに黒くて大きな身体に透き通った羽根を付けたクマゼミをちゃぁ〜んと見つけることができます。クマゼミの大合唱・・・これほどの数のクマゼミが一斉に鳴くありさまは、僕が伊豆に移転してからの十年間で三度目の体験(神奈川にいた頃はそもそもクマゼミ自体がもう珍種のようなものでしたし)になります。

いつも思うのは、その年に地中から這い上がり成虫となって声を挙げる蝉たちの分布や勢いは、いつどのようにして決まるのだろう? ということです。空を飛べるようになった蝉はわずか数日しか生きられないといいます。その許されたわずかな時間の内に、彼らの生態が可能とする範囲で飛び回って他の個体と出会って生殖を行い、やがて自らは既にいない数年後の夏に日の目を見るであろう子孫たちを後に残す・・・そう考えてみるともしかしたら今朝耳にしたクマゼミたちの大合唱は、数年前に栄えたひと夏のクマゼミたちの栄華を謳っているようなものとも言えるかもしれません。

僕が小さな頃は熊ん蝉(クマンゼミ)と呼んでいたクマゼミたち・・・比較的木々の低いところにある枝にさえとまって鳴き続ける彼らは、鳥たちに狙われ猫たちにも襲われ、それでも声を挙げるのをやめず今朝もひたすら伊豆の空気を震わせていました。二次元の地中から三次元の空間へ・・・自らの世界を見事に転換して命を生き尽くすかのような蝉たちは、人間たちがちまたで流行らせている「次元上昇」なるものを、当たり前のように毎年繰り返している存在に感じられる朝でした。


posted by フランキン at 11:17| 静岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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