2013年02月25日

カシリが輝く夜

少し前に読んだバルガス・リョサの「密林の語り部」という小説の中に、月のことが書かれていました。アマゾンの密林に住むマチゲンカ族には、人と自然の関わりや結びつきについて語られる幾つもの物語があり、彼らはそれを文字でも絵でもなく、口から口へ・・・語り伝えることにより今に遺してきたのだといいます。

密林に点在して生きるマチゲンカ族の集落を廻り、固唾をのんで聞き入る人々を前にして何時間も物語り、そうやって古来からの精神性が保たれていく・・・そのストーリーに準じて文化が保たれ、彼らの化粧や衣服、習慣までもが特徴づけられていく・・・彼らとは異なり、物質と情報に恵まれている*lらは、余りに多くの事々に日々晒されているからなのか、物事をシンプルに考えることがなかなか難しくなってしまいました。だからいつも、今日ではなく、明日を、未来を危惧しなければいられません。でも、マチゲンカ族の観点からすれば、月や太陽や地を思いやること・・・それがそのまま自分たちの幸福につながる・・・たまにはそんなシンプルな物語を古来からの真実を含んだ風景の描写として捉えてみるのもいいことがもしれません。

マチゲンカ族の言い伝えによると、夜空に昇り、太陽よりも弱く柔らかな光を放つ月は、「カシリ」(この名の音の響き、僕も気に入りました)という名で呼ばれるのだそうです。太陽はカシリとマチゲンカ族の娘との間に出来た子供ではないのか?語り部は自分たちのルーツと大宇宙とをつなげて物語り、大自然と人間として生きている自分たちは不可分の関係にあるのだということを、ごく当たり前のこととして聴く人々の脳裏に種を撒くようにして伝え続けます。

月が完璧なまでに丸い形を成して光を放つような今夜のような夜には、どの土地に住む人々も古来からその月のありさまに誘われて何かしらの意思のようなものを感じてそれぞれに擬人化した物語をもっているものです。

伊豆高原から見つめる真ん丸の、そして輪郭がじつにくっきりとした今夜の月は、高さを増すにつれて周囲に漂う雲の輪郭までを冷たい光に焼き焦がすような力強さがあります。月を中心に光背のように広がりながら伊豆の海を照らす月光は、海そのものを月面に変容させます。高原の上から車で走り降りる時にウィンドウ越しに見る銀色の海原は、さながらこれから着陸を目指す月着陸船のコックピットからの光景のようにも思えてきます。

真ん丸のカシリが光を放つ今夜・・・何もかもが違って見える・・・感じられる・・・こんな夜は、ひとつの神話の様相であって、マジックなのだと感じます。皆様、今宵はぜひ月に目を向け、どうぞ素敵な夜を。。。


posted by フランキン at 19:00| 静岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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