2012年10月23日

BEATLESS

BEATLESS

1年ほど前に、近未来を舞台として描かれた「あなたのための物語」という小説で初めて長谷敏司の小説を読みました。読後にしばらくつづいた虚脱状態が僕にとっては新鮮な驚きでもあったことと、彼の物語世界とそこに生きている登場人物たちが読み手の心に分け入ってくる時の説得力のある鮮明な存在感は、とにかく僕にとっては、静かに・・・でもものすごく後をひく♀エ覚だったのを懐かしく思い出します。

またあのような彼の作品を読んでみたい・・・と思っていたところ、発売と同時に書店で見つけ(伊東では珍しい^^)て、思わず手にとってしまったのが、長谷敏司の新刊「BEATLESS」でした。雑誌に連載されていた時(全然知らなかったけど)には、この物語の世界観とキャラクターたちにアニメファンをぐいぐいと惹きつけるようなredjuiceのイラストが挿入されていたらしいのだけど、今回の書籍化は、600ページを優に超える長編の物語世界を、挿絵抜きで純粋に小説として読ませ切ることに拘った、じつに堅牢で美しい装丁の本となっていて、小説を読み始めるという行為が、どこか近未来の世界へと通ずる扉を開いて入っていくような感覚があり、久しぶりにハードカヴァーの書籍(普段は大抵図書館利用^^)を購入して読む≠ニいう経験にワクワクしてしまいました。

既読の「あなたのための物語」は、人間と人工の知性との関係を、病に冒された主人公の女性科学者の死への道程に絡めて描き尽くした壮絶な物語でしたが、この「BEATLESS」も、今からちょうど100年後の世界を舞台にして、人間と、hIe(ヒューマノイド・インターフェイス・エレメンツ)、つまりは社会の中で人間の仕事を多くを肩代わりする人型のアンドロイド、人間が創ったモノとの関係を徹底的に見つめ尽くす物語となっています。BEATLESS公式サイトはこちら 

SFという空想物語の中のことなのですが、「BEATLESS」の舞台となる100年後の社会風景は、なんでもありの荒唐無稽なファンタジー世界というよりも、登場するガジェットも登場人物達が直面している諸問題も、すべてが彼らにとっての100年前にあたる現在の経済社会と、現在に至るまでの僕らにとってのまだそれほど遠く離れてはいない過去へとルーツが繋がっていて、描かれる多くの出来事や現象も今の時代に既にその兆候が現れており、人間の嗜好をより効果的に成就するためにモノがモノによって淘汰され、モノに対して人が心を向けることなくただ消費を際限なくくれ返し、やがてはそれらのモノたちが可能にしてくれている自動化なしでは生きていけないし社会も成り立ち得なくなった未来に、それらのかたち有るモノたちが人間との関わりの中でどんな意味≠持つのか?テーマはものすごく心当たりを感じるものとなっています。

100年後の未来を生きる少年と、ある日突然彼の前に現れた美しい女性のかたち≠したhIe・・・「ヒト」と「モノ」のボーイ・ミーツ・ガール。このシチュエーションだけを見れば、何やらありがちなアニメやライトノベルのようにも感じられてしまいそうですが、さすが長谷敏司・・・「あなたのための物語」で読ませてくれた問題提起の鋭さ、そしてそれを語る際の徹底ぶりは、精密なディテールと見事に映像的(映画的というよりアニメ的)な場面展開を伴って読み手にぐいぐいと迫り、この物語のテーマは読者である僕らの前にいま既にあるのだという、真摯な感覚さえ湧き上がらせてくれます。

僕的には、かなぁ〜り、お薦めの・・・というよりも、大好きな一冊となりました。そしてレイシアには、僕も完全にアナログハックされてしまい、読み終えた今もまだ後をひきまくっています。


posted by フランキン at 11:51| 静岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | あの映画見た?この本読んだ? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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