2010年10月28日

ある日のふれあい・・・そして「笑顔同封」

その手はとても小さくて、
いつでも引っ込められるように遠慮をふくみながら、
でも、明らかな意志に基づいて僕の手にふれてきた・・・

ふらりと立ち寄ったレンタルDVD店で、
客たちに混じりながら何気なくタイトルを見つめていた僕の手を、
誰かの温かい手がそっと優しく触れ、握ってくれた。

「えっ?」と、軽い驚きとともに振り返ると、
そこにはもう片方の手を父親に引かれた
4歳ぐらいの小さな男の子が笑顔で僕を見上げていた。

僕はすぐにその男の子が
ダウン症なんだということに気づいたのだけれど、
僕が振り向くのに驚いて僕から手を離したその子の表情は、
どうしたらあんな笑顔が生まれるのだろう・・・と感じるほど、
僕をその瞬間に幸せにしてくれる笑顔だった。


僕がその子を振り返ったことに
手を引いていた父親もすぐに気づいたのか、
たぶんこれまで何度も
繰り返してきたのであろう反応を僕に示す・・・

「あ、すみません・・・」

一瞬、僕にはこの子の父親が、
どうして僕に詫びているのかわからなかった。
幸福感・・・という言葉を
何のためらいもなく当てはめたくなるような
そんな豊かな感覚をこの男の子は僕に与えてくれた。
そのことのほうが僕には大きな出来事で、
謝られるということに違和感を覚えたのだ。

「謝ることなんてないのに・・・」

父子はそのまま僕から離れていったのだけど、
彼らが去って少し遅れて僕もやっと気づいた。
あのお父さんは、あの男の子と一緒に人生を歩みながら、
「すみません」・・・などという謝罪の言葉を、
きっと幾度も幾度も言わなければならない場面に直面する・・・
そんな社会に生きててきたんだ。

僕はとても申し訳ないような気持ちになるのと同時に、
一瞬のかかわりに過ぎなかったとはいえ、
その男の子の笑顔には人に浸透する豊かな力があり、
それは瞬くまに僕の中に染み込んで、
たまらなく愛しい気持ちにつつんでくれるとともに、
わずかの間にその日の僕を浄化してくれた・・・
そんな感覚を覚えていることへの驚きがあった。


なんの邪気も思惑も利己心もない・・・
そんな無垢な笑顔に接する時に、
たぶん人は自分の内側の何処かが呼応して、
善なるものが湧き上がってくるのを感じ、
微かな思いがけなさとを伴った清々しさを、
素直に覚えるのだろうと思う。

ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)

もう何年もどこかへしまいこんだまま、
どこに入れてあったかも忘れてしまっていた、
古いデジカメ写真がいくつもディスプレイに流れ始めた。
これもつい昨日のことだ。

最近のPCでは「笑顔検出」なとどいうものがあるらしく、
つい数日前まで使っていた少し時代遅れなパソコンから
やっと新しい機種へと乗り換えたばかりの僕は
その機能にちょっと意表をつかれてしまった。

笑顔度90%・・・99%・・・
ランキングされた幾つもの忘れていた笑顔・・・。

笑顔度なる尺度には僕も思わず笑ってしまったが、
家族やかつてお世話になった幾人もの人たちが、
僕に見せてくれたたくさんの笑顔が、「昔」というには近すぎる、
それほど遠くもない「過去」におかれたままになっていて、
こうしてふとしたことで目の前によみがえってくる。

こんなに素敵な笑顔を見せてくれた瞬間があったんだ・・
この人たちを・・・今、僕は無条件で受け入れられる・・・

本当に内から湧きあがってきたこぼれ出てくる笑顔には、
決して手段やテクニックなどが及ばない瞬時の浸透力がある。
それは人の存在そのものから現れ出て
文字通り光の速さで人に浸透し、
その人の内部の何処かに日差しのように働きかける。


そして、僕はふと思う。
僕は・・・果たしてどんな顔をしているのだろう?
どんな表情を時の流れの途中で残してきただろう?
誰かが何処かでもっているかもしれない写真の中で、
僕はどんな表情で自分の存在を表現しているのだろう。

こんなことを真夜中に考えてしまうのも、
あのダウン症の小さな男の子の笑顔に出会えたからだ。
もう2度と会うことはないのかもしれない。
でもあの子は確かに役割があって生まれてきた。
小さな存在が僕という見知らぬ人間の生き方にさえ影響を及ぼせる。
この世界での人同士の成り立ちや関わりというのは、
そういう見えないつながりで本当は成り立っているのかもしれない。

そういえば、ずいぶん前に、
さだまさしさんがまだグレープというフォークデュオで活動していた頃、
こんな歌があった・・・

笑顔同封

るんるん封を切ったなら こぼれる日差し
あなたは 手紙にまで 笑顔同封



あの男の子の笑顔に出会えたことを感謝するとしよう。
この日記にも、 「笑顔封入」・・・わーい(嬉しい顔)

いい歌です。でも貼り付けできないみたいなんで、
サーチ(調べる)ここからYouTubeに跳んでいってね。


posted by フランキン at 01:52| 静岡 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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