2010年08月10日

ビーチレッドに流れたあの歌の風景

ビーチレッド戦記(67年) コーネル・ワイルド監督 主演


わたしの彼は 戦いに行った
やがて海の彼方から 
わたしのもとに届いた 一通の手紙



私は 滾る憎悪をもって 敵と向かい合った
私たちは共に この島を手に入れるために来た
そして向かい合った 
暗いジャングルの中 国の違うふたりが 
ある日 ビーチレッドで 私と敵と…

敵は 私と同じように若かった
私たちは殺し合い そして 彼が先に死んだ
青い空の下 私と同じような 血を流しながら
ある日 ビーチレッドで 私の敵が…

今や憎悪は消え去り 私の心は痛む
なぜ殺しあわねばならないのか…



わたしの彼は ついにわたしのもとへ帰ってきた
魂を 海のむこうにおいて
昔の彼は もどらない…


〔吹き替え版の記憶より 声 納谷悟郎 小原乃梨子〕


映画館という経験が何しろはじめてだったはず…まだ学校にも行っていなかった小さな頃、両親が映画を見に行くのに、たぶん父母に抱かれながら、見に行ったというよりも連れて行ってもらったのがこの作品。ビーチレッド戦記(Beach Red)

8月のこの時期、ふとこの映画のことを思い出していたら、なんと今週、WOWOWで放送していたみたいで、この記事を書いているこの瞬間にもやっているらしい。ちょっとびっくりした。(WOWOWは我が家では見れないけど…)

僕が見たことのある戦争を描いた作品の中で、この映画は特別な位置を占めている。映画の表現技術の進歩と共に、最近の作品とじかに比べてしまえば見劣りは否めないものの、しかしそこに描写・表現しようとしているものの真実味は、数ある戦争を扱った映画作品の中でも群を抜いている。

南の島のジャングルで対峙する米兵と日本兵…米海兵隊の上陸…海岸線での激しい戦闘…そしてジャングル戦…。近年の「プライベートライアン」のオープニングと同様に…と言っても過言ではないほどの熾烈さを極めた上陸描写…。(事実、プライベートライアンでの上陸用舟艇の中の兵士の心理や、海岸線での攻防を、激しさと怯えを帯びた兵士の視点から描いたスピルバーグは、絶対にこの「ビーチレッド戦記」の幾つかのシーンにインスパイアされていると確信する)。しかし戦闘描写が斬新であったということ以上に、これだけ戦争への嫌忌を誘うものであるにも関わらず、制作されたのが67年というベトナム戦争がまだまだこれからでもあったはずの時期であること、そして他の多くのアメリカ映画の中でも、戦争を片側からではなく日米両側の兵士の視点から表現しようとする試みが、当時としては極めて珍しい作品であるといえると思う。

映画は戦闘のさなかでの、日米の兵士ひとりひとりの心の内側と、彼らが戦場でも内に秘めて持つ暖かな家庭の思い出などのモノローグを交差させながら、見ている者が殺し合うことへの矛盾と哀しみを心の中に自然と芽生えさせることに成功している。

僕はこの映画を両親につれられて映画館に入った(見に行ったとはとても言えない…笑)時には殆ど理解できなかった。ただ、砲火によって腕を吹き飛ばされた米兵が銃火の中に呆然と立ちすくむ姿や、火炎放射器によってトーチカから焼きだされる日本兵、互いに負傷し動けなくなった日米の兵士の間で水とタバコを交換しようとするシーンなどが強烈に子供心に印象を残していた。そして実はそれからずっと後になって、ある夏休みの昼間にテレビで放送されたこの作品を見てはじめてきちんと通して見たことになる。

中でもこの映画が見る者の心に残す風景というのは、映画の冒頭にながれる、戦場に行った兵士の帰りを待つ妻と彼女のもとにとどいた夫からの手紙のストーリーをつづったジーン・ウォーレスの歌が醸すものに負うところが大きい。テレビではもちろん吹き替え板であったわけだが、この映画の大切な要素でもあるこの歌とともに、吹き替え版では流れる歌を背景に歌詞の一部が翻訳され、それを映画の中でも実生活の中でも夫婦であったコーネル・ワイルドとジーン・ウーォレスの心の声として、納谷悟郎小原乃梨子が語りを入れ、その響きに小さかった僕も心を詰らせてしまったのを憶えている。正確とは言えないけれども、今でもその時のふたりの語りを空で言えるというのは、当時の僕は相当にこの映画の言わんとするところに心を動かされたのだろうと思う。この記事に貼り付けたそのジーン・ウォーレスの歌の後に書き込んだ歌詞は、その時の記憶に残る納谷悟郎さんと小原乃梨子さんの語りを思い出したものだ。
 


posted by フランキン at 22:47| 静岡 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | あの映画見た?この本読んだ? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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